マラービルで見られた破壊は、爆発物を満載した一台のライダー・トラックで起こせることを証明しようとして、政府は、フロリダ州エグリン空軍基地ライト研究所装備局長に実験研究を行なわせた。それは、ティモシー・マクヴェイが「単独爆弾犯」であることの証明に使われるはずであったが、その結果は、政府が頭を抱えることになってしまった。
◆エグリン空軍基地での実験は連邦政府公式見解のウソを暴いた
合衆国空軍によって行なわれた強化コンクリート建築物への爆発テストの分析結果は、168人の生命を奪った1995年4月のオクラホマ・シティ・アルフレッド・P・マラー・ビル爆破事件を解明するための重要な鍵となるだろう。フロリダ州エグリン空軍基地のライト研究所装備局による試験データと写真に基づく報告書は、「外に停まった巨大な硝酸アンモニウム/重油(ANFO--ammonium nitrate/fuel oil)トラック爆弾ただ一つで、マラー・ビルは大量死と破壊に至ったのだ」という政府公式見解に異議を唱える専門家たちにとって大きな意義を持っている。
元合衆国空軍のベントン・K・パーティン准将は、かつて空軍装備技術研究所の前所長であり、世界でもトップクラスの爆薬や砲の権威であった。その指揮のもとで、「ANFOトラック爆弾からの爆発波は、オクラホマ・シティ連邦ビルの頑丈な鉄筋コンクリートを倒壊させるには及ばない」という批判が展開された。この事実は、犯行現場の他の裁判所資料とともに、別の破壊装置がビルの柱の中に置かれていなければならなかったという結論にとって不可欠なポイントである、と主張されている。それは、この爆破テロが連邦当局が主張するよりずっと洗練された計画であって、単独爆弾犯ではできないような人手と頭脳と筋肉が必要である。もしそれが本当であれば、「ティモシー・マクヴェイが単独で事件を起こし、トラック爆弾が“アメリカの地で起こった最悪のテロ攻撃”の道具だった」という政府の主張では、別の爆弾犯たちが法の網を逃れていることになる。
新しいエグリンの爆破実験は、パーティン准将によって述べられた基本的なポイントを見事に証明している。すなわち、爆風は強化鉄筋コンクリート建築物に対しては非効率的なメカニズムであり、「(マラー・ビルの)損害のパターンは、追加の破壊装置がなければ技術的に不可能であった」という。『オクラホマ州オクラホマ・シティアルフレッド・P・マラー連邦ビルの1995年4月19日の事件に対する爆破効果に関するケース・スタディ』と名づけられた56ページのレポート(以下、『エグリン爆破効果研究』と略す)は、エグリンの爆破実験からの写真とデータ、さらに建築と取り壊しの専門家ジョン・カルバートソンの指導のもとでこれらの事件についての広範な技術分析もある。この研究はエグリンのパラメータ・データをマラー・ビルに当てはめ、連邦検事による公式の爆破シナリオに厳しい反対姿勢を示している。
◆実験に使われた建物は、連邦ビルよりはるかに強度が劣る
爆破効果実験は、エグリン空軍基地で、ライト研究所の指揮のもと、長さ24m、幅12m、高さ9mの3階建ての鉄筋コンクリート建築物を使った。『エグリン爆破効果研究』によると、エグリン実験の建物は「オクラホマ・シティのアルフレッド・P・マラー・ビルほどは大きくないが、よく似ている点が多く、それゆえ優秀なデータ・ソースとなっている」という。研究は続けてこう書いている。
エグリン実験の建物は、長いほうには3列の柱が並び、短いほうには格間が並ぶという基本設計がマラーと同じにしてある。エグリン実験の建物は、15cmの厚さのコンクリートパネルでできているが、これはマラーの15cmの厚さのフロア・パネルと同じである。さらに、35cm角の柱が各部屋の角と床の端で壁を支えている。この配置はマラー・ビルの柱や梁、床の構造と同一である。
エグリン実験の建物とマラーの設計上の類似とは別に、『エグリン爆破効果研究』では、二つの建物の間には建築法と総体的な建築上の完全さについて、大きな違いを記してもいる。エグリン実験の建物は「強度と爆発体制の点で劣るものと見なさざるを得ず」そして「実際には途上国でよく見られる建築物であり、合衆国でよく見られるコンクリート建築物の再現ではない」。マラー・ビルの床はエグリン実験の建物より「約5倍の鉄で」強化されている。さらに大きな違いは、柱と梁に見られ、そこでは「マラー・ビルに満たされている鉄はエグリン実験の建物よりはるかに重く、多くの場合は10倍以上違う」。『研究』は、「エグリン実験の建物は柱と梁にかすがいを使っていないが、マラー連邦ビルでは使っていたため、エグリン実験の建物よりはるかに強度があった」ともいう。さらに、エグリン実験の建物は天井板がないが、それは「全体的に強度を弱め、特に3階は爆破装置の影響を受けやすい」。最後に、コンクリートは時間とともに強度が増すため、比較的新しいコンクリートのエグリン実験の建物は、マラー・ビルのコンクリートの強度よりはるかに弱いと考えなければならない。
◆外部からの爆風だけでは実験の建物に損害を与えられなかった
空軍実験が証明したように、爆風だけでは単独でエグリン実験の建物に大きな損害を与えることができなかったため、上記のすべてが特別な意味を持つことになった。爆風では、明らかに弱いエグリンの建物に壊滅的な損害を与える力がないのだから、はるかに強いマラー・ビルを破壊する力があったなどとはさらに信じられないことになる。
3種類の異なった爆破実験が、エグリン実験の建物で行なわれた。最初の実験で使われたのは704ポンド(300kg)のトリトナルだが、これは830ポンド(370kg)のTNT、または適切に配合されたおよそ2,200ポンド(1t)の硝酸アンモニウム/重油(ANFO)混合物に相当する。トリトナルは軽いアルミニウム・ケースに入っており、建物の外、壁から12mの位置で地面から7.5mの高さに置かれた。この実験は、マラー・ビルのトラック爆弾と条件が最も近く、オクラホマ・シティの爆風衝撃波の損害を評価するための重要なパラメーター・データを提供している。建物の外にあることを除けば、アルミニウム・ケースはライダー・トラックの軽い覆いと同様の容器となった。トリトナル実験は、トラック爆弾同様、重い爆弾の助けなしに爆風の衝撃波だけでコンクリートの建物に効果的に損害を与えようとした。
これに対して、第2・第3の実験は、エグリン実験の建物の内部で鉄のケースの弾頭を爆発させた。第2実験では、ふつうのMk-82弾頭(180ポンド=82kgTNT相当)を1階の角部屋の外壁から1.2m内側に置いた。第3実験では、250ポンド(114kg)貫通弾(35ポンド=16kgTNT相当)を2階の部屋の隣接する壁から75cm離した角に置かれた。ライト研究所が示している写真では、これら2つの爆破装置はトリトナル装置よりはるかに小さいが、エグリン実験の建物にはるかに大きな損害を与えた。この不釣り合いな損害は、4つの重大な要因の作用によるものであった。それは、距離、爆発の衝撃の機能的複合、爆弾を通しての機能的複合、そして封じ込められた圧力(建物内に閉じこめられていることによる)である。
◆爆風には劇的なほど効果がない
パーティン准将が遺憾ながら強調したように、空中を通っての爆発衝撃波の効果のなさは劇的なほどだった――特に野外では、爆発エネルギーは四方八方に拡散してしまう――その圧力と破壊力は距離の3乗に反比例して急激に弱まってしまうのだ(半径単位で表現された距離)。つまり、装置の中心では150000ポンド/平方インチ(73kg/cm2)の最大爆発圧を生み出すような爆破装置からの爆風であっても、半径12m先に至ったときには200ポンド/平方インチ(0.1kg/cm2)にしかならない。これは、爆風だけでは、重い鉄筋コンクリートの柱のあるような強化コンクリート建築物に対してほとんど効果がないということである。
外部でのトリトナルによる最初の実験のライト研究所からの写真では、ひじょうに重要な爆破効果についての原則が確認できる。15cmの厚さの1階のコンクリート壁パネルは爆風で破壊されているが、鉄筋強化棒はほとんどの場所でそのまま残っているのだ。35cmの柱は、爆発衝撃波によっても、壊れた鉄筋強化の壁のパネルの圧力によっても動じていない。2階の壁の損害は、1階よりはるかに少なく、頑丈さを補強する天井がないというのに3階の壁にはほとんど損害がない。
エグリン爆破実験のために用意された建物の垂直面全体の圧力を示した詳細な表がある。これは1フィート(30cm)の升目ごとに、その表面にかかりえた最大圧力を示したものだ。この圧力図によると、最初の実験で垂直面にかかった圧力は17g/cm2〜85g/cm2の範囲にあった。1階の15cmの厚さの壁への最大風圧は、36g/cm2〜85g/cm2。2階での最大圧力は26g/cm2〜69g/cm2。そして3階では17g/cm2〜41g/cm2。たとえ壁の主要部分が15cm幅のパネルの耐久力を超える34g/cm2以上の圧力がかかっていたとしても、柱には何の損害もなかったのである。
◆ANFO爆弾は無能
2180kgANFO爆弾と見積もられているライダー・トラックによる爆発の圧力を計算した結果、『エグリン爆破効果研究』は、34g/cm2以上の圧力がかかる範囲を、爆破装置の中心から約13mと見積もった。「それゆえ、爆発物の中心から半径13m以内にある15cm幅の鉄筋コンクリートパネルのうち、爆発物からの衝撃波の進路に対して垂直またはほぼ垂直に面していたものは、すべて、破壊されただろう」と説明している。また、マラー・ビルのフロアパネルは、エグリン実験の建物と同じ厚さであり、3階からは、エグリン実験のパネルと似た位置関係にあったことに注目している。そこで、『エグリン爆破効果研究』では、このことがわかったという。「直接ライダートラックに隣接するようなマラー連邦ビル3階・4階の限られた範囲だけが、影響を受けただろう。3階では、爆発の中心点からビルの北面に向かって約12mの距離に、円のような形がビルの内側に向かって伸びていたが、爆発物はビル北面よりさらに5メートル北にあったのだ。この円形の部分には、約116平方メートルに及ぶ15cm厚コンクリートパネルがあった……34g/cm2以上の圧力を受けた4階のフロアパネルは、およそ37平方メートルの円形部分に限られる」
『エグリン爆破効果実験』の結論は、驚くべき含みを避けがたく伝えている。エグリン実験の建物は、マラー・ビルよりも耐久力が明らかに小さいことから、マラー・ビルで起こったと思われる損害の範囲を誇張するような何らかの誤りがあった、という含みを残しているのだ。されだけでなく、ライダー・トラック爆弾のための計算も極めて緩やかにしてある。「ANFO爆弾はエネルギーの低い爆発物であり(TNTの約30%)、[政府の見積もりでは]1.3m3程度ではそもそも爆発の材料として役に立たないものであるから、計算された最大可能な爆風の圧力に近い圧力をこの爆弾が生みだしたということは疑わしい」と主張している。「このような事情のため、損害がここで計算されたような半径13mの範囲に及んだということも疑わしい」
◆『エグリン爆破効果研究』の結論
マラー連邦ビルへの損害は、建物の内部に局所的に配置された機械による損害と一致している……
マラー連邦ビルでの損害は、トラック爆弾そのものによるものではなく、むしろビルそのものの中に局所的に配置された装置のような別の要因によるものと結論づけなければならない……マラー・ビルに損害を起こすために使われた手段は、それゆえ、単にトラックを停車させてそこから離れたというようなものではなく、はるかに複雑で込み入ったものである……
同様に、カリフォルニア州オーバーンの免許を持つ専門技術者で、50年に及ぶ経歴と5000以上の建築計画に携わった経験を持つアルヴィン・ノーバーグは、このように書いている。エグリン実験建築物のデータから得られる証拠は、「マラー・ビルへの深刻な建築上の損害はビルの外側のトラック爆弾によって引き起こされたものではない」こと、また「マラー連邦ビルの倒壊は、重要な柱に隣接して局所的に配置された『機械的に結びつけられた装置』(爆弾)の結果であったことを証明している」。
航空宇宙産業で半世紀以上の技術経験を持つカリフォルニア州ホイッティアーのケネス・ゴウは、エグリン爆破効果実験の評論の中でこう書いている。「エグリン実験建築物レポートは……マラービルの損害の実質的な部分が内部からの爆発によるものであったという結論をさらに補強するものである」。